晴れの日の午後、久々にぷらぷらと雑貨屋さんをめぐる。
とある店で古ぼけたチャイニーズシューズが目にとまった。
お花や蝶がビーズで刺繍してあるやつだ。
立ち止まりそれを眺めていると、もうず~っと昔、小学校に
入学する6歳だった私の記憶がふと蘇ってきた。
今回はそれについてつれづれなるままに・・・書こうかな。
入学式の当日、忘れ物がないか母とチェックしていた。
小学校からもらった入学式の持ち物リストと照らし合わせながら。
ピカピカのランドセルに、筆記用具に、雑巾2枚、あとはよく
覚えてないけど嬉々として荷物を詰め込んだと思う。
そして忘れちゃいけないのが上靴。
新品の上靴が入った母手作りの、小さい体にはちょっと大きな
上靴入れを引きずりながら小学校へ向かった。
学校に着くと母と別れ、生徒用の玄関へ連れて行かれた。
ぴかぴかの一年生たちでごった返している。
どきどき。
みんなドタバタと真っ白な上靴に履き替えて教室に駆けてゆく。
さてと、私も上靴に履き替えよう。
真っ白な上靴に!
ウキウキしながら上靴入れから取り出した真っ白な上靴・・・まっしろな・・・
ま、ま・・・
そこに入っていたのは真っ赤なベルベット生地のチャイニーズ
シューズだった。
しかも華々しく刺繍を施され、ビーズでこれでもかというくら
いキラキラだった。
ひどい、ひどすぎる!あぁ、なんという仕打ちをしてくれるのだ、母よ。
確かに確認しなかった私も悪いよ。
持ち物リストにも「上靴」としか書いてなかったと思う。
白いの~とかこんなやつ~っていう具体的な指示は確かに無かった。
けどさ、普通学校で履くやつって、一般的な上靴ってあるでしょ。
だってみんなちゃんと同じような白いの持ってきてたもん。
なんだってあなたはこんな真っ赤な、ましてやチャイニーズ
シューズをチョイスしてしまったのだ。
入学式ってホントどきどきする。
小学校という未知なる世界に足を踏み入れる日。
それまでの幼稚園児のおこちゃまな世界とは格が違うのだ。
なるべく初日は目立ちたくない。
風景にとけ込みながら周りをうかがいつつ、徐々に自分という
存在を確立させたい性格なんだ、私は。
なのにその緻密な計画は玄関先で崩れ去った。
真っ赤なキラキラのお陰で。
視線がこれでもかっていうくらい足に刺さりまくる。
痛い。痛すぎる。いろんな意味で。
「あいつたぶん中国人やで。」コソコソと話し声が聞こえてくる。
チャイニーズシューズを履いているからといって中国人と推測
するとは安直なヤツめ!
人を履物で判断してはいけないと幼稚園で習わなかったのか!
刺さる視線と、不安につぶされそうになりつつ入学式は
たんたんと過ぎていった。
そして最後にトドメの記念撮影。
よりによって私は最前列に座らされる。
浮かない顔の私とは対照的に、場違いな上靴は一番前の
ど真ん中で嫌みなくらい悪目立ちしていた。
そして母はそんなことおかまいなしに、その日一番のキメ顔で
微笑んでいた。
帰り道、母に「なんであんな上靴入れたのぉ~(怒)」
とぷりぷり怒ったが、母は「だってキラキラしててかわいい
じゃな~い。似合ってたわよ!」と全く気にしていない。
私の母はちょっと個性的な人です。
今思うと「普通の」、「一般的な」上靴を入れておいてくれて
いるだろうと期待していた私がそもそもいけなかったみたいだ。
私の思う「普通」と母の思う「普通」を一緒だと思っちゃぁいけない。
そもそも母の小学校ではチャイニーズシューズが上靴の主流
だったのかもしれないし、はたまた木靴とかワラジとかビーチ
サンダルだったかもしれないのだから。
そもそも、そもそも・・・授業参観日に私のいない全く別の
クラスで立派に授業を参観し続け、友達のお母さんに
「まきちゃんは隣のクラスですよ」と注意された人物だ。
普通は通用しません。
そんな愛すべき母との数々の恥ずかしい想い出は、キラキラの
チャイニーズシューズのように鮮やかに思い出されて、私に
とっては意外と宝物だったりする。
Byマキシ