2011年4月10日日曜日

つれづれなるままに・・・

晴れの日の午後、久々にぷらぷらと雑貨屋さんをめぐる。
とある店で古ぼけたチャイニーズシューズが目にとまった。
お花や蝶がビーズで刺繍してあるやつだ。
立ち止まりそれを眺めていると、もうず~っと昔、小学校に
入学する6歳だった私の記憶がふと蘇ってきた。

今回はそれについてつれづれなるままに・・・書こうかな。

入学式の当日、忘れ物がないか母とチェックしていた。
小学校からもらった入学式の持ち物リストと照らし合わせながら。

ピカピカのランドセルに、筆記用具に、雑巾2枚、あとはよく
覚えてないけど嬉々として荷物を詰め込んだと思う。
そして忘れちゃいけないのが上靴。
新品の上靴が入った母手作りの、小さい体にはちょっと大きな
上靴入れを引きずりながら小学校へ向かった。
学校に着くと母と別れ、生徒用の玄関へ連れて行かれた。
ぴかぴかの一年生たちでごった返している。

どきどき。

みんなドタバタと真っ白な上靴に履き替えて教室に駆けてゆく。
さてと、私も上靴に履き替えよう。
真っ白な上靴に!

ウキウキしながら上靴入れから取り出した真っ白な上靴・・・まっしろな・・・

ま、ま・・・

そこに入っていたのは真っ赤なベルベット生地のチャイニーズ
シューズだった。
しかも華々しく刺繍を施され、ビーズでこれでもかというくら
いキラキラだった。

ひどい、ひどすぎる!あぁ、なんという仕打ちをしてくれるのだ、母よ。

確かに確認しなかった私も悪いよ。
持ち物リストにも「上靴」としか書いてなかったと思う。
白いの~とかこんなやつ~っていう具体的な指示は確かに無かった。
けどさ、普通学校で履くやつって、一般的な上靴ってあるでしょ。
だってみんなちゃんと同じような白いの持ってきてたもん。
なんだってあなたはこんな真っ赤な、ましてやチャイニーズ
シューズをチョイスしてしまったのだ。

入学式ってホントどきどきする。
小学校という未知なる世界に足を踏み入れる日。
それまでの幼稚園児のおこちゃまな世界とは格が違うのだ。
なるべく初日は目立ちたくない。
風景にとけ込みながら周りをうかがいつつ、徐々に自分という
存在を確立させたい性格なんだ、私は。

なのにその緻密な計画は玄関先で崩れ去った。
真っ赤なキラキラのお陰で。
視線がこれでもかっていうくらい足に刺さりまくる。
痛い。痛すぎる。いろんな意味で。

「あいつたぶん中国人やで。」コソコソと話し声が聞こえてくる。

チャイニーズシューズを履いているからといって中国人と推測
するとは安直なヤツめ!
人を履物で判断してはいけないと幼稚園で習わなかったのか!
刺さる視線と、不安につぶされそうになりつつ入学式は
たんたんと過ぎていった。

そして最後にトドメの記念撮影。
よりによって私は最前列に座らされる。
浮かない顔の私とは対照的に、場違いな上靴は一番前の
ど真ん中で嫌みなくらい悪目立ちしていた。
そして母はそんなことおかまいなしに、その日一番のキメ顔で
微笑んでいた。

帰り道、母に「なんであんな上靴入れたのぉ~(怒)」
とぷりぷり怒ったが、母は「だってキラキラしててかわいい
じゃな~い。似合ってたわよ!」と全く気にしていない。

私の母はちょっと個性的な人です。
今思うと「普通の」、「一般的な」上靴を入れておいてくれて
いるだろうと期待していた私がそもそもいけなかったみたいだ。

私の思う「普通」と母の思う「普通」を一緒だと思っちゃぁいけない。
そもそも母の小学校ではチャイニーズシューズが上靴の主流
だったのかもしれないし、はたまた木靴とかワラジとかビーチ
サンダルだったかもしれないのだから。
そもそも、そもそも・・・授業参観日に私のいない全く別の
クラスで立派に授業を参観し続け、友達のお母さんに
「まきちゃんは隣のクラスですよ」と注意された人物だ。
普通は通用しません。

そんな愛すべき母との数々の恥ずかしい想い出は、キラキラの
チャイニーズシューズのように鮮やかに思い出されて、私に
とっては意外と宝物だったりする。



Byマキシ

5 件のコメント:

  1. kaz wrote:

    まきちゃんのお母さんて面白いね♪
    でも、まきちゃんもしっかりその性格を受け継いでると思う~(*´∇`*)

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  2. マキシ wrote:

    ホントに遺伝とは恐ろしいものです~(笑)

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  3. とっても笑える、あっ笑ってはいけない素敵なお話ではあ~りませんか。

    私たちが子供の時代は専業主婦が多く、授業参観にはほとんどの母親が出席していましたが、私の小学校の入学式に妹が産まれ、それ以来タイミングが合わず授業参観には出てもらえない苦い思い出があります。

    一番下の妹のPTAにはマメに顔を出していた様ですが、マキシの母同様クラスを間違えて堂々と座っていたという失敗談有り。しかも、その前の週にTBSの高視聴率番組「ザ・ベストテン」に私含め3人が上京して 細川たかしさんの「矢切の渡し」のバックで踊った事が島中で話題となり、母はたくさんの父兄から「見ましたよ」と声を掛けられていただけに この失敗は注目を浴びる事になり、今でも私たち姉妹の間で語り継がれています。

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  4. マキシ君、踊りも個性的だが、文才も驚きだ。
    今年度の芥川賞(伊是名の部)にノミネートされました。読んでいるうちに、情景が思い浮かびました。今年になって読物のNO、1間違いなしです。物語り風に、語り部風に徒然にさり気なく引き込む技は母上のDNAでしょう。

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  5. SANSEIさんに褒めていただけるなんて、畏れ多くもワタクシ感激でございます!

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